コインワールド

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「私たちのモデル」- フレッドウィルソン

前回も取り上げた暗号通貨/ブロックチェーン領域に多く出資を行うUnion Square Venturesのパートナーであるフレッドウィルソンが、暗号通貨・トークンエコノミーを前提として彼らのVCモデルに関して書いたブログ記事を読んだのでまとめます。

Our Model – AVC

 これまでのモデル

・ファンドサイズを大きくしすぎない
1号ファンド$125M→2号ファンド$150M→3号ファンド$175M

・基本的にはシードからシリーズAまでのラウンドで出資。

・既存投資先で伸びて来たところにはフォローオン投資をおこない、シェアの維持or追加

・レイターステージにも投資する「Oppurtunity Fund」もあるが、そこからの出資は年1-2件程度。

・1ファンドあたり20-25社に出資し、そのうち2-3社が"High impact company"になることを目標にしている

保有シェア率の決まりはないが、High impact companyに関しては、たいてい15-20%のシェアを保有している

・High impact companyへの投資から回収までの期間は7-8年

・これまでUSVにとってHigh impact companyとなった会社をインパクト順に並べると、以下の通り:

ZyngaIPO – 2011

Indeed – Recruitへ売却 – 2012

TwitterIPO – 2013

Tumblr – Yahooへ売却 -2013

Lending Club – IPO – 2014

Etsy – IPO – 2015

Twilio – IPO – 2016

MongoDB – IPO – 2017

・USV独自の"Thesis based investing"に沿って全てのパートナーが投資を行う

このThesisは、2011年には以下であり:

 2015年には以下のようにアップデートされています:

新しいモデル

But with a new model, tokens, in its infancy, it begs the question of how it will impact our approach.

しかし、新たな「トークン」の登場によって、この既存のアプローチを変革させる必要も感じると言っています。

 既存投資先ではすでに4社(Protocol Labs/Filecoin, Kik/Kin, Blockstack/Stack, YouNow/Props)がトークンオファリングを行う、あるいは行う予定があるとアナウンスしており、この新しいモデルがどうワークするのか共に見ていくとのこと。

新しい投資モデルに関して、フレッドウィルソンが以下のようなことを問題提起しています。

1. Can a token based investment return a fund with more or less frequency than an equity based model?
トークンベースでの投資はエクイティ投資よりも高確率でリターンを得ることができるのか

2. How long are the hold periods going to be in a token based model?
トークンベースモデルでの保有期間はどれくらいになるのか

3. Will the 10-15% high impact percentage that we see in our equity based portfolios be similar in a token based model?
既存のエクイティモデルで実現できている10-15%のこうインパクト投資リターンはトークンベースモデルでも同じようになるのか

4. What are the appropriate ownership levels for a token based investment vs an equity investment?
トークンベースモデルでの適切な保有シェアはどれくらいになるのか

トークン投資をエクイティ投資と並行して行なっていくことで、これらの問いの答えを見つけていき、ベストパフォーマンスを作り続けるべく必要に応じて今までのモデルの変革を行なっていくとのこと。

最後の方では、以下のように締めくくっています。

It is an interesting time to be in the venture capital business. The decade that came after the internet bubble burst turned out to be a fantastic time to make early stage venture capital investments and we have been fortunate to participate in those good times. But the market has changed a lot with large incumbents taking up more and more white space in the internet sector as we have known it. At the same time, an exciting new sector and model, crypto/tokens, has emerged which gives us a lot of optimism about the opportunities ahead of us.

VCビジネスを行う者にとっては、面白いタイミングだ。ネットバブル崩壊後の10年間はアーリーのベンチャー投資を行う素晴らしい期間となり、我々はそこで投資をできる幸運なプレイヤーだった。しかしそのあと巨大プレイヤーがネット領域の空白セクターをどんどん埋めていき、マーケットは大きく変化した。同時に、今はクリプトやトークンといった全く新しいエキサイティングな領域/モデルが出現してきたおかげで、今後は大きな可能性があることを示してくれている。

まだ黎明期の仮想通貨・ブロックチェーン領域において、リスクをとって実験的なアプローチを大胆に取り続けるユニオンスクエアベンチャーズとフレッドウィルソンの動きは非常に興味深く見ています。トークンエコノミーやICOの出現で、VCビジネス自体にもどういった変化が2018年起こってくるのか、引き続き注視していきたいと思います。