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世界のブロックチェーン/ICO関連ファンドまとめ

ここ最近、日本国内でもブロックチェーン/ICO関連ファンドの組成発表が相次いでいます。

www.nikkei.com

日本の独立系VCファンドとして名高いB Dash Venturesが投資先の仮想通貨取引所QUOINE(コイン)と協力し、B Cryptosの名のもと100億円規模のファンドを組成し、ICOスタートアップへのトークン投資と、仮想通貨自体への投資を行っていくと発表。 

thebridge.jp

また、グローバルブレインはOmiseGOの発行体であるOmiseと共同で、主にイーサリアムベースのブロックチェーンスタートアップを支援する数百億円規模のファンド組成を発表しました。渋谷からコワーキングスペースも展開していくとのこと。

世界のブロックチェーン/ICO関連にフォーカスしたファンド事例はすでに多く出てきているので、その中から8つのファンドをまとめてみたいと思います。
※単に仮想通貨に投資する投資信託ファンドなどはここでは除きます

 Pantera Capital(Pantera Capital Management LP)

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www.panteracapital.com

日本でもTechCrunch等で記事になっていたのでご存知の方も多いだろうパンテラキャピタル。
もともと2003年にVCファンドとして設立され、2013年に米国初のビットコイン投資ファンドを作りSBが買収したヘッジファンドであるフォートレスから$150Mの出資を受けるなど成功を収め、2017年6月にICO投資のみに特化したPantera ICO Fund LPの組成を発表しました。
当初ファンド規模は$100Mをターゲットにしていたようですが、WSJによると$55Mにとどまった様子。 

主要メンバー

・ファウンダーCEO:Dan Morehead

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Tiger ManagementでCFOを勤めていた人物。

・チーフインベストメントオフィサー:Joey Krug

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2013年大学在学中に、音とBluetoothビットコイン決済を実現するPOSシステムを開発。2014年にイーサリアム上で初めてのICOを行い530万ドルを集めた、あらゆる未来の事象に対する投機市場を作り上げるAugur(オーガー)のファウンダー。2016年にThiel Fellowshipにも選出されている。

・パートナー:Paul Veradittakit

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App Annie等に投資するStrive Capitalでモバイル領域投資にフォーカスしたアソシエイトを勤めていた人物。

 

投資基準・フィロソフィー

TechCrunchによる主要メンバーへのインタビューによると、

基本的なスキームとしては、ICO実行前のスタートアップを発掘し、トークンを安く手に入れ、マーケティングや採用、BizDevの支援を行い、ICO後にKrakenなどの取引所で売却するような形。

投資基準としては:

仮想通貨がサービスに欠かせないような仕組みになっているかという点を重視しています。サービスネットワークの中で使われているのがその通貨のみかどうかということです。

とのこと。

投資先

これまでにICOファンドからは、Kik、Ox、FunFair、Omise、Civicなどに投資している。KikとFunFairに関しては「筆頭トークン主」で、一社当たり基本的にできるだけ大きい割合でかなり大きめの金額で投資していく方針のようだ。

その他のポートフォリオはこちら:

Portfolio — Pantera Capital

 

Blockchain Capital

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http://blockchain.capital/

パンテラキャピタルと並んで早期から仮想通貨領域に投資を行なっている有名ファンド。ここが面白いのは、ファンドのトークン化にすでに取り組んでいること。

今年5月に3号ファンドの調達を行い、$50Mのうち、$10Mを"First Digital Liquid Venture Fund"として、トークン化(BCAP)して6時間で調達完了。そして、その投資家へのコミュニケーションプラットフォームとして「Blockchain Loop」を用意し、ファンドの投資家がここからディールソーシングを行なったりすることができるようだ。

主要メンバー

兄弟(双子?)のStephensブラザーズが代表を務める。
・ファウンダー/マネージングパートナー:P. Bart Stephens

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ファミリーファンドのStephens Investment Management, LLC (SIM)の運営や、以前はIvanhoe Capital Corporationに務めていた。

・ファウンダー/マネージングパートナー:W. Bradford Stephens

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Fidelity Venturesでシニアアナリストを務めていた人物。Sina.comのシードファイナンスに関わったほか、韓国のIMI Exchangeの役員でもある。

投資基準・フィロソフィー

早期から仮想通貨領域に投資していることもあり、2011年のKrakenへのシード投資を始めポートフォリオを見ると各国の取引所やウォレットサービスなどへのエクイティ投資が多い。シードからCoinbaseのシリーズCに参加するなど幅広い。

直近はEOSやKik, Unikrn等のICOにも参加している。

これまでのエグジット実績は以下

・AUTHY -> Twillioが買収

・bex.io -> Klinchが買収

・Bitnet -> 楽天が買収

・ChangeTip -> Airbnbが買収

・Coinsetter -> Krakenが買収

投資先

ここから詳しい投資先がみれます

Portfolio - Blockchain Capital


Digital Currency Group

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Digital Currency Group

こちらも老舗(?)のBarry Silbert氏が代表を務めるデジタルカレンシーグループ。

日本のbitFlyerにも2014年に投資しています。ICO特化ではないのですが、有名なので一応いれておきます。

主要メンバー

・ファウンダー:Barry Silbert

・ディレクター:Meltem Demirors

投資基準・フィロソフィー

DirectorのMeltem Demirorsによると、初期はビットコインリップルなどプロトコルそのものへの投資から始まり、その上に立つ世界各国の取引所、その後WyreやVeemなどの決済サービス群へとフォーカスが変遷してきたと語っている。

投資先

Coinbase, Xapo, Chain, Ripple, bitFlyer, Abra, Filecoinなどへの初期投資をはじめ、27ヶ国に100社以上

 

Polychain Capital

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Polychain Capital

Coinbaseの第一号従業員が立ち上げたサンフランシスコベースの仮想通貨ヘッジファンド

2016年12月に$10M規模のファンドをアンドリーセンホロウィッツ(a16z), Boost VC, Union Square Venturesらから調達しスタート。

CrunchBaseによると、17年7月組成のファンドはすでに$200M規模で、前述のa16zとUSVが追加出資しているほか、Sequoia Capital, Founders Fundなども出資している。

主要メンバー

・ファウンダーCEO:Olaf Carlson-Wee

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大学時代にビットコインに関しての論文を書き、Coinbaseの最初の従業員として、Head of Riskを担当していた人物。以前、"3年間ビットコインのみで暮らす男"としてもForbesに取り上げられた。

This Man Has Been Living On Bitcoin For 3 Years

投資基準・フィロソフィー

以下ファウンダーのOlafが語るように、会社への投資ではなく、基本的に"プロトコル"つまり暗号通貨やトークンに投資をしていく

Polychain manages a hedge fund that invests exclusively in digital assets. We invest exclusively in protocols, not companies, and we do this by investing in things made scarce through the blockchain

ここで語られているプロトコル関連の話は、元USVのJoel Moegroによる"Fat Protocol"を読むとわかりやすく理解しやすいです。

Fat Protocols | Union Square Ventures

投資先

Kik, Basecoin, Orchid Labsなど

Why This Hedge Fund CEO Once 'Put Most Of My Meager Life Savings Into Bitcoin'

 

 ConsenSys

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consensys.net

もともとはソフトウェア開発スタジオとして、イーサリアムコミュニティの初期から、Metamask、benefactoryやBlock Appsなどのイーサリアム・dApps(分散型アプリケーション)のベースになるようなプロダクトの数々をサポートしてきたConsenSys。
2017年9月に"ConsenSys Ventures"として、イーサリウムベースのプロジェクトに特化した$50M規模のファンドを発表。

主要メンバー

・ファウンダー:Joseph Lubin

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Ethereum Switzerland GmbH (EthSuisse)のCOOやEthereum Foundationの立ち上げを通して、コミュニティの初期からイーサリアムのコア技術に貢献してきた人物。

 

・マネージングパートナー:Kavita Gupta

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マッキンゼーコンサルタントからキャリアをスタートし、インドへの投資ファンドを運営し、国連のSocial Finance Innovator Awardを受賞した人物。

投資基準・フィロソフィー

MPのGupta氏によると

"There is still value to due diligence and even if two PhD kids have sold tokens based on a brilliant white paper, they still have to figure out how to deliver a company. That's not necessarily something they have experience doing."

とのことなので、もともとConsenSysが持つプロダクト開発やマーケティングのチームをもとに、ICO後の開発と運営をサポートしていくところを売りにしていく形のようだ。

投資ステージは、プレシード、シード、トークンセール後の会社にも投資していくとのことなので幅広い。投資サイズは明らかにされていない。
保有期間は基本的に6ヶ月単位で考えているとのこと。これは既存のVCからすると非常に短く思えるが、Gupta氏曰く「マーケットは非常に新しく、毎日変化しており、トークン投資での6ヶ月はVC投資での5年に相当する」とのこと。

投資先

直近のTechCrunchの記事で、ファンドローンチ最初の3ヶ月でBlockfi, Unikrn, Pryzeを含む4社への投資がなされたと公開されている。 

1confirmation

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Home - 1confirmation

Coinbaseの元ビジネス開発マネージャーであるNick Tomaino氏が立ち上げた仮想通貨専門ファンド。ウェブと社会の分散化を実現する起業家に出資するとしている。

2017年8月に$20Mファンドの調達開始が発表され、Mark Cubanが出資を決定したことでも話題になった。

主要メンバー

・ファウンダー:Nick Tomaino

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2013年にCoinbaseに初期の従業員としてジョイン。アーリステージファンドのRuna Capitalでプリンシパルも務めていた。

アメリカ初のトークンエコノミーにフォーカスしたカンファレンスToken SummitをWilliam Mougayarとともに立ち上げたり、私も愛読している暗号通貨やブロックチェーンに関するニュースメディアThe Controlの主宰でもある。

投資基準・フィロソフィー

ヘッジファンド的な仮想通貨ファンドと異なり、単に上場通貨やトークンを買収し、上がったところで売るような形ではなく、より伝統的なシードステージVCに近いスタンスで投資先を支援していくようだ。

“I’m most excited by entrepreneurs building new projects, and there’s no fund right now that’s solely focused on investing in both tokens and projects at the earliest stage of project development.”

プロジェクトの最初期から、その支援者として単にトークンだけではなくプロジェクトの成功自体をサポートしていきたい。そして、そういったことにフォーカスしているファンドはない、とのこと。 非技術的なところには実際に手を動かしてハンズオン支援を行っていく模様。

投資スキームとしては、SAFT(Simple Agreement of Future Tokens)とよばれる通常のVC投資でYCらが採用しているSAFE(Simple Agreement of Future Equity)に似た者を採用するとのこと。このスキームに関しても別記事で調べたい。

結局いくらICOで集めたところで、そのプラットフォームなりプロダクトが世に使われるものにならなければ意味がない。それゆえ、ファウンダーの性質など"people"をもっとも重視すると語っている。

またLPに対しての、ビットコインヘッジファンドとの違いに関して以下のように説明している

“They have 80% invested in bitcoin, and 15% in ether, and the rest in other tokens. So I’m telling my LPs [limited partners], if you want exposure to the existing asset class, that’s going to get easier, you shouldn’t pay 2-and-20 for that”

“If you want exposure to the best early-stage projects in the world -- and only that -- and that’s something you can’t do otherwise, you should invest in me,”

つまり、ヘッジファンドは結局ほとんどをビットコインに投資してるだけでしょ、それに2%の管理報酬と20%の世界報酬払ってるのはもったいない。もし世界の有望なプロジェクトに初期から関わりたいのなら、1confirmationにしかできないことですよ、という感じです。

投資先

CrunchBaseによると、アンドリーセンホロウィッツやパンテラキャピタル、AngelListのファウンダーNavalなども出資した、BaseCoinのICOへの投資が公開されている。

MetaStable Capital

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MetaStable – Long-term value investing crypto asset hedge fund

AngelListファウンダーのNaval Ravikantらが2014年に設立した、クリプトアセットにのみ特化した形のヘッジファンド。USVやa16z, セコイア、ベッセマーなど錚々たる顔ぶれが出資している。

主要メンバー

・Naval Ravikant

https://cdn.filepicker.io/api/file/NdvLCkSd74OmmAgpUQBy?policy=eyJjYWxsIjoicmVhZCIsImV4cGlyeSI6MzI5OTQ2Nzk0Nzd9&signature=f902e589e1c5ad5f16805871e2cfc58cee7c10a92a26b783a8f88b3100a58df0

言わずと知れたAngelListのファウンダーCEO。AngelListでもALシンジケートなど、投資プラットフォームの改革に取り組んでいます。

・Joshua Seims

https://www.crypto-finance-conference.com/resources/public/lava3/media/joshua-seims-portrait.jpg

TrustedCoinの創業者でエンジェル投資家

投資基準・フィロソフィー

公式サイトに"We Invest in Coins, not Companies"と書いている通り、プロトコルベースの投資方針で、上述したPolychain Capitalに似たスタンスかと思います。
ブロックチェーン企業への投資は以下3つのリスクがあるため、ベースとなる通貨に投資することで最後2つのリスクを排除するとうたっています。

The underlying currency must appreciate.(ベースとなる通貨価値が上がっていかなければならない)
The company must execute well.(会社としての実行力がなければならない)
The investor must wait until a liquidity event.(投資家はリクイディティが出てくるまで待たなければならない=上場など)

ファンドの種類は2つあり、"Balanced"はバリュー投資のスタンスで、ビットコインを多く複数のアルトコインを長期間保有するファンド。"Edge"はすでにビットコインは多く保有している投資家向けで、イーサリアムICOで生まれた新しいコインをバランスよく保有していくファンド。

LPの最小投資額は$1Mで、年2%の管理報酬と20%の成果報酬を取るモデル。

Secretive Cryptocurrency Hedge Fund Metastable Examined

投資先

CrunchBaseによると、BaseCoin, Orchid Labsなどに出資している。

Placeholder Capital

https://cdn-images-1.medium.com/fit/c/200/200/0*jPVQhStItexConmr.jpg

元Union Square Ventures(USV)の従業員らがローンチしたクリプトファンド。

公式なファンド運営スタートのアナウンスはまだなされておらず、Webサイトもない段階だが、従来のVCファンドスキームと同じく10年期限で100億円規模の組成を目指しているとの報道。

主要メンバー

・ファウンダー: Joel Monegro

https://fm.cnbc.com/applications/cnbc.com/resources/img/editorial/2017/07/13/104584785-Screen-Shot-2017-07-13-at-12.34.38-PM.530x298.jpg?v=1499963795

米国トップティアVCであるUSVでアナリストを勤めていた人物。"Fat Protocols"の記事がバズってブロックチェーン界隈で有名に。

USVはCoinbaseへ出資を行なったり、クリプトヘッジファンドなどへ出資を行うなど、伝統的なVCの中でもこの領域にはかなり先進的な部類。直近ではBlockstackのICOに参加するなど直接投資も始めている。

 ・Chris Burniske

https://pbs.twimg.com/profile_images/919289878331797504/FR0PmXKy.jpg

ファンドマネージャーで初めてビットコイン投資を始めた、ARK Investment Managementに在籍していたブロックチェーンエキスパート

投資基準・フィロソフィー

ブロックチェーンスタックにおいては、プロトコルレイヤーが大きなリターンを生むという記事で有名になったJoelが率いることもあり、その領域へのトークン投資がメインになっていくのかと思います。

 

www.cnbc.com

 

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世界のブロックチェーン/ICO関連ファンドを8つまとめてみました。 

これ以外にも、ドイツ・ベルリンベースのNeufundなど新興ファンドが出てきているのですが、一旦これくらいにして今回は終わりたいと思います。

ブロックチェーンはファンドのあり方も大きく変えていくと思っているので、今後もウォッチしていきます。